大学三郎殿御書(大学殿事) 弘安元年(1278) 聖寿五十七歳御著作
(前欠)
『祈り(御祈念)』等の御依頼を頂戴するとは思っていなかったにも拘らず、(安
達泰盛殿からの)御要請を頂いた事を、かたじけなく(有り難く)存じます。
貴殿(大学三郎殿)と私(日蓮大聖人)との関係は、師でもあり、弟子でもあり、
檀那でもあります。
その御為には、首を切られたとしても、遠流(遠方への流罪)になったとしても、
替わる事が出来るならば、何としても、替わりたい所存です。
けれども、この事(安達泰盛殿からの『御祈念』の要請を、日蓮大聖人がお受けに
なられる事)ばかりは、その御要請を叶えることが出来ません。
大学(大学三郎殿)という方は、普通の人とは異なって、日蓮が御勘気(龍口の法
難)を蒙った時、御自身の身を捨てて、私(日蓮大聖人)の味方をして頂いた人であ
ります。
今回の御要請は、城殿(安達泰盛殿)からの御依頼によるものです。
そして、城殿(安達泰盛殿)と大学殿(大学三郎殿)とは、知音(親しい間柄)を
お持ちのようです。
その理由は、大学殿(大学三郎殿)は坂東(関東)第一の御手書(能書家)であり、
秋田城介殿(安達泰盛殿)は御手(能筆・能書)を好まれる人だからでしょう。
(後欠)
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